MAKITA SPORTS

マキタスポーツPresents FLY OR DIE

マキタスポーツが2014年から音楽活動の主軸にすえているロックバンド。元々テレビ番組「ゴッドタン」の企画から、ヴィジュアル系のパロディバンドとして産声をあげたが、その枠にとどまらず15年夏の「ROCK IN JAPAN」出演で5000人の観客を熱狂させ、その後もLIVEを重ねて音楽性を深化。あらゆる様式美の世界を隠れ蓑にしながら、マキタ自身の音楽性を存分に放出している。すでに15年末の「COUNT DOWN JAPAN」に出演が決まっており、16年1月に日本コロムビアよりデビュー・アルバム「矛と盾」をリリース予定。その後3月には東名阪でのレコ発ツアーも予定されている。
FLY OR DIE HP
高岡洋詞 矛と盾 解説
アルバム「矛と盾」に各界からコメントをいただきました!
マキタスポーツpresents Fly or Die
「矛と盾」
1st Album [全11曲収録]
CD●COCP-39407 /¥3,000(+tax)
矛と盾

嘘か誠か? 白か黒か? 冗談かシリアスか?
マキタスポーツ、音楽の天才性をついに現す

1.
約束
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
2.
ダーク・スター誕生
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
3.
矛と盾
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
4.
とぅ・び・こん・にゅ「映画かいけつゾロリ」主題歌
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
5.
ロンリーワルツ
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
6.
怨歌~あんたじゃなけりゃ 
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
7.
普通の生活
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
8.
愛は猿さ
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
9.
残響FANATIC BRAVE HEART featuring 鈴木このみ
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
10.
あいしてみやがれ
(作詞:大森靖子/作曲:マキタスポーツ)
11.
The theme of F.O.D
(作詞・作曲:F.O.D)
ANALOG LP “Dark’~ness Special Version”
「ダークネス・スペシャル・バージョン」
LP●COJA-9302  /¥4,500(+tax)
[全10曲収録]
ANALOG LP “Dark’~ness Special Version”
SIDE.A
1.
The theme of F.O.D
(作詞・作曲:F.O.D)
2.
ダーク・スター誕生
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
3.
矛と盾
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
4.
ロンリーワルツ
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
5.
愛は猿さ
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
SIDE.B
1.
残響FANATIC BRAVE HEART featuring 鈴木このみ
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
2.
約束
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
3.
普通の生活
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
4.
怨歌~あんたじゃなけりゃ
(作詞・作曲:マキタスポーツ)
5.
あいしてみやがれ
(作詞:大森靖子/作曲:マキタスポーツ)

アルバム「矛と盾」について
高岡洋詞(フリー編集者/ライター)

 Fly or Dieのファーストアルバムのタイトルは『矛と盾』。蓋し象徴的である。ご存じの通り「矛盾」という成語の由来は、商人が「何物をも貫く矛」と「何物をも通さぬ盾」を売っているのを見た客が「その矛でその盾を突いてみればいいじゃん」と言った、という話。元は中国の戦国時代の法家・韓非が儒家の徳治主義を批判して持ち出した譬え話だそうだが、要は「ツッコミ」である。

 お笑いにルーツを持つマキタスポーツはFly or Dieの結成とともに、「ツッコミ」を入れる客から「矛と盾」を売る商人、すなわち堂々と「ボケる」側に回った。大胆に、確信犯的に。

 『矛と盾』はひと筋縄ではいかないマキタ流エンタメロックの最新型と言うべき会心の一枚だ。冒頭の「約束」はナルシスティックな語りが入った黒夢調のニューウェイヴ系Vロック。続く「ダーク・スター誕生」はダークネスが「ローズ」と呼ぶファンへのメッセージだが、ホーンが入ってやたらファンキーだ。雲行きは大喜利的にうまいこと言う「矛と盾」から加速度的に怪しくなっていく。「とぅ・び・こん・にゅ」と「残響FANATIC BRAVE HEART featuring 鈴木このみ」はマキタの“構造フェチ”ぶりが発揮されたアニソンパロディだが、前者では原ゆたかの歌詞が、後者では鈴木このみの歌声が、出藍の誉れ的な効果を生んでいる。3拍子の失恋ソング「ロンリーワルツ」あり、渡辺淳一的な母娘の愛憎劇「怨歌〜あんたじゃなけりゃ」あり、ピアノが跳ねるラテン調「愛は猿さ」あり。「普通の生活」に至っては、平凡な中年男のささやかな幸せを謳歌するほのぼのフォークロックである。

 これほど雑食なV系バンドは見たことがないどころか、長年マキタの活動を見てきた僕の口をついた言葉は「ほぼマキタ学級※じゃん」だった。どこまでがFly or Dieで、どこからがマキタ学級なのか。境界線は徹底的にボ(ヤ)ケてしまった。それは問題なのか。いや、これでいいのだ。
V系という「ジャンル」に我々はなんとなくの音楽的なイメージを抱いているけれど、そもそも「ヴィジュアル系」という言葉には音楽性への言及がない。マキタはV系を「キメ・カオ・ヒモ」とクールに定義してみせたが、V系というお釈迦さまの掌の上でどこまで飛べるか、という「ずらし」の試みそのものが批評であり、笑いを生む「矛と盾」のフレームを形成しているのである。
 もともと『ゴッドタン』の人気コーナー「芸人マジ歌選手権」発のスピンオフ的プロジェクトだったFly or Die。
「V系」と「小肥りのおじさん」の組み合わせ自体が「矛と盾」なわけだが、視聴者はその図式ごとFly or Dieを抱きしめた。予想外だったであろうその受け方にマキタが「乗った」のは賢明だった。今や彼は「いかに気持ちよく、心を込めて歌うかしか考えてない。
笑いは放っといても取れるから」と言う。「気持ちよく」「心を込めて」とは、つまり本気ということ。本気とは「ベタ」であり「ボケ」である。マキタの軽く自己陶酔した歌唱に耳を傾けてみてほしい。カッコはつけきらないとつかないものなのだ。美しく彫れた仏に全力で魂を吹き込んだ結果、『矛と盾』は笑えてかつ泣ける、ハイコンテクストにして明快な、矛盾そのものが魅力を放つ極上の「悪性のエンターテイメント」に仕上がった。

 マキタがV系を定義した名言「キメ・カオ・ヒモ」に、Fly or Dieを知った僕はあえてもう1セットの2文字「マジ」を足したい。カッコ悪いくらいのひたむきさ、鼻白むほどの自惚れなくして感動はない。「マジ」こそが、芸事、芸術にとどまらず、人間のあらゆる営みを輝かせるのである。
※マキタ学級:マキタスポーツ率いる音楽エンターテイメントロックバンドとして2001年に結成、これまでにシングル1枚とアルバム3枚をリリースした。